小児感染症の特徴は、成人に対して
- 初感染が多い
- 免疫が未熟または特殊であり、同じ起因微生物でも成人と異なる症状を呈しうる
- 経過が成人に比べ急速で回復も早い
などの特徴が挙げられる。感染症は小児一般外来では最も多い疾患の一つであり、その症状は発熱、咳、嘔吐、下痢といったものが多い。
起因微生物(または生物)にはウイルス、細菌が二大要因であるが、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、真菌、寄生虫も挙げられる。
ウイルス感染 小児のウイルス感染は季節変動が知られている。春は熱性痙攣、ライノウイルスによる普通感冒、ノロウイルスによる流行性嘔吐症が多い。梅雨時になると気管支喘息発作が増加するが、それに伴ってパラインフルエンザウイルスによる咳喘息も増加する。コクサッキーウイルスによるヘルパンギーナ、発疹、無菌性髄膜炎、アデノウイルスによる咽頭結膜炎(プール熱)は夏に多い。秋になると再び気管支喘息発作が増加するが、ライノウイルスによる普通感冒も流行する。冬になるとRSウイルスによる細気管支炎やロタウイルス、ノロウイルスによる乳児嘔吐下痢症、インフルエンザが猛威を振るう。
感冒とウイルス 小児科で患者が最も多い感冒(風邪、上気道炎)を起こすウイルスにはコロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルスなどが挙げられる。これらは下記のように検査をしやすい物もあるが、それ以外は臨床上細かいウイルスの同定が重要でないこともあり、一般には同定検査をされない。
胃腸炎とウイルス 冬場に多い急性胃腸炎の原因にはロタウイルス、ノロウイルスが多い。後者は一時マスコミにて注目されたが、ロタウイルスよりも症状が軽い(ので迅速検査も作られていない)。
特定の疾患に結び付くウイルス 特定の疾患に結び付くウイルスとしてはインフルエンザウイルス(インフルエンザ)、麻疹ウイルス(麻疹、SSPE)、水痘帯状疱疹ウイルス(水痘、帯状疱疹)、ポリオウイルス(ポリオ灰白髄炎)、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、肝炎ウイルス(A型、B型、C型肝炎)、単純ヘルペスウイルス(口唇ヘルペス、ヘルペス脳炎)、サイトメガロウイルス(先天性サイトメガロウイルス感染症、乳児期の腸炎)、RSウイルス(細気管支炎)、日本脳炎ウイルス(日本脳炎)、コクサッキーウイルス(手足口病、ヘルパンギーナ、急性結膜炎)、エンテロウイルス(手足口病、コクサッキーウイルスにくらべ重症)などが挙げられる。
迅速検査のあるウイルス 臨床上注目され、比較的病院で同定の迅速検査を行いやすい起因ウイルスにはインフルエンザウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが挙げられる。これらのウイルスはそれぞれ臨床上の特徴を有し、検査法が確立しており一般的な病院検査にて短時間で同定できる。
細菌感染
感染細菌は成人とほぼ同じである。発症時期や発症の仕方が成人と異なることがある。
発症部位は成人と同じく、全身あらゆる臓器に起こりうるが、膀胱炎(乳幼児)、中耳炎(幼児)、敗血症(乳児)などは比較的起こりやすい。
発症時期については、新生児では大腸菌、B郡溶連菌感染が、幼児期ではインフルエンザ幹菌、肺炎球菌感染が多いことが知られている。
3ヶ月未満の子どもでは細菌感染により敗血症への以降が多く、慎重な観察が必要とされる。
- 発熱の対応
小児の場合は平熱が高めのことが多いため一般的には38度以上の体温で発熱と考える。37.5度以下ではほぼ平熱である。発疹の有無によって鑑別疾患が大きく異なる。川崎病、リウマチ熱、若年性関節リウマチといった発疹を伴った発熱のある小児特有疾患も存在する。発熱パターンは日内変動をしながら徐々に増加していれば重症化、徐々に解熱すれば治癒傾向と考えられる。日内変動にて短絡的に重症化、治癒傾向と判断しないように注意する。家庭にて行える発熱時の対処法の一例を示す。
新生児の時期は発熱を起こすこと自体が極めて異常であり、肺炎、髄膜炎にて死に至る可能性がある。一般に生後3ヶ月以内の発熱は小児科専門医の受診が必要と考えられている。しかし、それ以降はいつもと明らかに違うと思われない限り緊急受診は不要である場合がほとんどである。
発熱時に風呂に入れないほうがよいというのは風呂が屋外にあった時代の話であり、2009年現在の日本では当てはまらない。基本的には寒気がするようならば暖めて、熱くなったら冷やすといった対応で十分である。冷やす場合は頭部、左右鼡径部の3点を冷やすと効果的である。
- 早期乳児の発熱
早期乳児は免疫システムが完成しておらず細菌感染のリスクが高いと考えられている。母乳によるIgGの経口投与が早期乳児の感染防止には役立っている。早期乳児が発熱した場合、大抵はウイルス性感染症であることが殆どであるが約10%程に細菌性髄膜炎や敗血症といった重症感染症が含まれている。そのため、小児科専門の医師の診察が求められるが1か月以内であると各種検査の有効性も疑問視される。感染のフォーカスが明らかにならない場合は入院適応となることもある。1か月以降であればメイヨークリニックによるRochster criteriaをもとに非専門医の診察で十分なことが多い。
- Rochster criteria
これらの基準を満たすとき、重症感染症は否定的となる。
- 幼児の発熱
3か月以後の乳児から3歳頃の発熱は救急外来では非常に多い主訴である。注意深く身体所見をとったとしても30%程度は熱源不明となってしまう。その場合は潜在性菌血症、尿路感染症、潜在性肺炎、悪性腫瘍や膠原病が考えられる。特に前二者は抗菌薬による治療にて早期介入可能なことから注意深い診察が必要となる。潜在性菌血症は全身状態良好な良好であるのにもかかわらず血液培養にて細菌が検出されることである。3か月から3歳くらいで頻度が高いと言われている。肺炎球菌であればそのまま自然経過で改善するが、インフルエンザ桿菌の場合は90%以上の確率で敗血症や髄膜炎にいたるといわれている。体温39度以上で白血球数15,000/μl以上であると潜在性菌血症の可能性が高くなる。尿路感染症も1歳以下の男児や2歳以下の女児では見つけにくい疾患となる。尿検体をカテーテルや膀胱穿刺で無菌的に摂取するとしんだんできる。体温が体温39度以上で白血球数20,000/μl以上のときは聴診上ラ音を認めず、痰もないのにもかかわらず胸部X線では浸潤影を認める潜在性肺炎という病態も知られている。いずれにせよ重篤な病態は肺炎球菌による場合が多く、予防接種による予防が望まれる。発熱が敗血症のサインかどうかを見分けるにはバイタルサインを用いるという方法も知られている。これらは患者が安静にしている場合の指標であるため泣き出してしまうと心拍数、呼吸数とも上昇してしまうので判定が難しくなる。正常範囲より+2SD以上の心拍数の変化や呼吸数の変化は発熱だけが原因とは考えられず敗血症の可能性も考える。
- 解熱剤の効果
解熱剤を用いると熱が下がるため発熱による全身症状の軽減には役に立つ。しかし重症度を示す発熱というサインが病態に関係なく改善するため重症感染症を経過を追う上では不利になることがある。一般的に発熱が起こっていれば解熱剤は病態に関係なく解熱を行う。発熱があっても全身状態が良好な場合は解熱剤を飲むメリットはない。解熱効果によって安静を保てないため逆に感染症が遷延する場合もある。解熱剤を用いても発熱が改善しない場合は重症感染症を疑うこともあるが、体温にてそれらを鑑別するのは困難とされている。解熱剤を用いても全身状態が全く改善せず、重篤感が続く場合は細菌性髄膜炎の可能性は高くなる。
